21世紀版イヤミの生まれる理由
ネットの掲示板やtwitterで、外国製品を絶賛して日本製品は全部ダメとこきおろす人を見かけますが、「おそ松くん」の中の「イヤミ」に似ているなと思います。「日本のモノを遠くから見下している世界的視点の自分がカッコいい」という考え方が共通しているからです。21世紀版イヤミと名付けたいと最近思うようになりました。
日本製品をけなす視点と同様に、日本の生活習慣、政治家、学校をけなす意見にも、ある種の自虐と、世界的視点で見下す評価をしている文章に出会います。例「欧州じゃこれが常識!日本のそれの事情は欧州に20年遅れてるからダメ!」「北米じゃこれが当たり前!日本のこれこれは低レベルでダメ!」という調子。
その「21世紀版イヤミ」的な文章の最大の欠点は「どう良くすればよいのか」の提案が書けてない部分です。たいていは「自分だけはそこらの日本人と同じじゃないよ」という高みにたった視点で毒を吐いている、酒場の酔っ払いのようなものです。(多少は改善策を書いてるのはまだマシな方です。)
昔も今も「日本のモノを遠くから見下している世界的視点の自分がカッコいい」人種が減らない理由を考えてみました。
(1). 「隣の芝は青い」感情。
基本はこれです。まだ見ぬフランス、イタリア、アメリカ、ブラジルの外国の公園は皆きれいな植物と素敵な人たちがいっぱいに見えるものです。そこには小銭を求める浮浪者も動物のフンも無いという妄想。
(2). 「選別後の輸入」を知らない。
例えば輸入小物雑貨。店先に並ぶ日本製雑貨は安物から高級品まで雑多。でも輸入雑貨は一見して個性的で高級。そこから短絡的に「フランス製品は皆最高!日本製はダメ!」と結論づける人がいます。日本に輸入される前に業者が選別してるから、良いのも当然なんです。米国映画も配給会社が選別して日本に来てます。
(3). 「高いもの買ったら正当化」。
大金を払った自分を正当化せざるを得ない立場。 例えば外国製高級乗用車などを買ったあとで欠点を知って後悔しても大失敗と書く人は少ないです(外国車でも廉価な車は割に正直な感想がきけます)。だから高級な輸入家電製品も不満の声は耳に入りにくいという仕組みがはたらいてます。(2015年4月の記事、電気自動車「テスラモデルS」を買った男性がバカだったと価格.comで泣くで失敗と書いた人は勇気あります。約1000万円の車。) 高価な商品を購入した場合の自己正当化については増井俊之「界面潮流」「第52回 自己正当化の圧力」記事も参考になります。
(4). 「旅行自慢、持ち物自慢」
これは自分でもなりました。反省します。初めてアメリカ旅行したあとには、日本のクレジットカードに文句つけたくなるとか、日本の喫茶店のデザートの少なさに文句つけたくなるのは確かにあります。上記(1)と似てますけど、旅行だと他の国の長所ばっかり記憶に残るもんです。たった一度外国旅行(一国だけ)行っても、俺は世界を見てきたんだという錯覚に陥るのもよくあることです。でも「アメリカの巨大アイスクリーム最高!」と唱えていても何にも変わらないんですね。クレジットカードが日本の普及率が低いのもまず強盗、泥棒が日本で少ないのが大前提。
(5). 「自虐や遠慮の気持ち」。
自虐で笑いをとって「日本人の自分もだまされやすいし」という個人的自虐とか、その延長で日本の企業を「日本のパナソニックもすっかりこの分野で衰退して」という自虐で笑いをとる記事というのはわりと見かけます。そして「遠慮」。 ニューヨークとかパリに旅行した人は街に犬のフンが多いとか地下鉄入り口が汚ないとか外国の嫌な部分も見てますがはっきり言葉で書くのはマナー違反と思って書かない人は多いです。
(6). 「日本を否定しなきゃいかん事情の人」
日本を否定しないと生きてられない人もtwitterやfacebook上に少々見かけます。ヨーロッパ在住とか、諸事情で東南アジアに駐在してる人たち。「自分は世界的視点で日本のダメさ加減を指摘してるんだ、どうだ!」という勢いは見えますけど批判する根拠が乏しいので、twitterで「どうだ欧州はこれが常識だぞ」「日本以外のアジアはこれが当たり前!」と豪語すると、冷静な反論がtwitter上で登場して、あっさり否定される事もあるようです。せいぜい自分の住んで居る近所だけを題材に「イギリスではこうです」「シンガポールではこうです」と正直に書いておけばよいんじゃないでしょうか。
(オマケ。イギリス毒舌日記はイギリス在住の日本人女性のブログですが、日本的視点というか個人的視点でイギリス人の変なところをバサバサ批判していて面白いです。日本賞賛というほどでもなく。)
以上長々と書きましたが、外国製品を絶賛する文章は半分くらいは「世界的視点の自分がカッコいい」21世紀版イヤミ型の人間が書いている文章という事がありますので、何を基準に良し悪しを語っているのかを冷静な視点で読むのが大事です。例えば「イギリス製D社掃除機は吸引力が最高で日本製はみなダメ」という個人の文章を見ても、その吸引力の数字比較はどこにあるのか、冷静に探せばgoogleで10秒で見つかります。
(番外1。世界と日本を自分の目で評価できない人が多い、という例はスポーツや芸術でも多いです。 古い例だと、野茂投手がアメリカでのデビューをする1995年より前には、「日本のプロ野球選手なんて全然ダメダメ。アメリカの野球に通用するやつなんて一人もいないよ」と断言する人が野球評論家にたくさんいたはずなんですよね。野茂やイチローがメジャーリーグに出てからはそういう人たちは沈黙を守っているようです。)
(番外2。 家庭用ゲーム機の日米対決でも2010年頃に、日本製ゲームは全滅するぞと断言していた人が多かった気がしましたけど販売統計PlayStation 4/Xbox One/Wii Uの月次販売の比較グラフ...を見るとXboxが一番売れてないみたいですね。世界的視点で勝ちほこるようにソニーをこきおろしていた人たちは何だったんでしょう。)
(追記。この「21世紀版イヤミ」の文章は以前2012年1月に書いた『日本製品を叩く「国際視点のオレ」達』とだいぶ重複した内容になっていました。大事なことなので二度書いた、とでも思ってください。)
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コメント
日本をバッシングも賞賛もしませんが、自分は日本人なんだなーと海外に行く度に実感します。
例えばアメリカののシャワーはみんな壁からヘッドが生えていて日本のようなホース部分がまず滅多にありません。
どちらが便利かといえば自在に動かせるホースがある方が便利に決まっています。
ドライヤーは一社独占か!?というほど同じモノしか見かけません。
HiとLoのみでエコやイオンはもちろん送風すらありません。
こちらはシャワーとは違って、電子レンジや洗濯機に感じる「大抵は使わない余計なお世話機能?」と思う日本製品がやや不利なようにも思います。
日本人は「(利便性を犠牲にしてでも)進化していないと不安になる」最たる人種のように思うことが多々あります。
ヨーロッパは進化を否定するかのように保守的、アメリカは進むところはグイグイ進みたがるけど、「これはどーでもいい」と思う大部分の日常に関しては30年間全く進化していないような印象を受けます(;^_^A
クレジットカード文化がすっかり定着している一方で未だに公共料金は銀行の小切手決済メインで、最近ようやく自動引き落としができるようになってきていなくもない、といったアンバランスさ加減が全てを象徴しているようにも思います。
日本は「とりあえずなんでも進んでみよう」と空回りしている80%に対して20%が定着していくような印象を受けます。
今や新幹線にもシャワートイレが装備され始めていますが、なかったこととして消えていくG-Codeだったりキャプテンシステムだったりi-modeだったりクールビズだったり…が諸国よりも多いように思えます。
それが正しい流れなのか無駄な流れなのかはよくわかりませんが、帰国する度にホッとできる国であることをまずは喜びたいです(´∀`)
投稿: じぞう | 2015.05.11 03:51
貴重な意見ありがとうございます。
最近もよくアメリカに行ってますね。
で、じぞうさんの書いた文章には
むやみに日本製品をけなす文が出てこないのが立派なものです。
そういえば日本のキャプテンシステムのことも
もう少し調べてみたいんです。フランスのミニテルの方が少し
成功したような気もするけどミニテルももっと調べないと
よく知らないまま終了してしまいました。
そのうち書いてみます。
投稿: なおひこ | 2015.05.11 19:56